たゆたえども沈まず (2021):映画短評
たゆたえども沈まず (2021)地元テレビ局の記者たちによる”次”への思い
地元局が満を持して制作した本作。ここにはあの日救えなかった命の無念さと、それを抱えながら生きている人たちの”悲劇を繰り返すまい”という思いが詰まっている。”津波てんでんこ”の教えを伝える防災動画を震災2年前に制作し、それを実行して隣の小学校の生徒たちまで救った釜石東中の事例。車椅子で津波に流された人を思いながら裏山に避難経路を作った旅館の女将。それらを感動秘話にするのではなく、事実を残すことに徹しているところに報道記者たちの覚悟が見える。それでも時折垣間見える同じ被災者同士という距離感の近さ。地元局だから捉えられた被災者の言葉では言い表せない本音や感情も映像から伝わってくるだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます