インタビュー

第1弾:
アンセル・エルゴート

明調新聞の新人記者ジェイク役

TOKYO VICE: アンセル・エルゴート

Q:「TOKYO VICE」という作品のどこに興味を持ったのでしょうか?

まずは、東京にとっても興味を持ちました(※オレンジ色はアンセルが日本語で答えた部分)。初めて東京に来た時、「ワオ! この街はビジュアル的にすごく特別だ。ここで撮影すれば、それだけでビジュアル的にすごいものになるだろう」と思ったんです。

その後、時代が面白いと思いました。1990年代は携帯電話が普及していなくて、今ほどネオンもなく、ざらついた雰囲気がありました。そして、日本の文化が大好きで、日本に来ることになりました。

TOKYO VICE: アンセル・エルゴート

Q:アンセルさんにとって、時代も違えば国も違う作品です。その違いをどのように感じましたか? また、そのギャップをどのようにして埋めようと思われたのでしょうか?

90年代は携帯が(あまり)ありませんでした。それは今と当時をすごく違うものにしています。世界とは離れているのですが、自分の周りとはすごくつながっている感じですね。

「TOKYO VICE」の現場はいつも、とってもリアルな感じがありました。明調新聞の現場はとっても、本当に自分がそこにいるような感覚になれるんです。なので、自分が1990年代にいると感じるのはとても簡単でした。ヘアメイクもコスチュームデザイナーも、現場のスタッフ全員が助けになってくれました。

それに当時はヤクザがもっと力を持っていたと聞きました(注:暴対法が施行されたのは1992年のこと)。当時、彼らの支配力は強く、暴力的で恐ろしかったと。それも大きな変化だと思います。

それに、当時は外国人も今ほどいなかったと聞きました。でも撮影の時はコロナの時で、(日本にいる)外国人は少なくなりました。なので、そんな東京にいるのは、ちょっとジェイクと似たような経験だったのかもしれません。

TOKYO VICE: アンセル・エルゴート

Q:ドラマの1シーズンをすべて日本で撮影する、というのはどういう経験になりましたか?

とってもいい経験でした。実際に日本に住んで撮影できたことは、わたしの人生で最も貴重な経験となりました。役のために一生懸命、日本語を勉強しました。合気道をしました。新聞記者の勉強をしたりもしました。

Q:新聞記者の勉強とは、具体的にはどんなことをされたのでしょう?

マイケル・マン監督が最初にわたしにやるように言ったのは、調査報道を学ぶことでした。なので、ロサンゼルスでジャーナリズムのコースを取り、引退したロサンゼルス・タイムズのジャーナリストで今は探偵をしている人から、約1週間にわたって学びました。

警察の調書を渡されて、「ジャーナリストとしての君の仕事は、これに色や引用を加え、さらには本当に起きたことなのかファクトチェックをすること」と教えられたんです。

「TOKYO VICE」でも莫(豊原功補演じるジェイクの上司)に「一言一句、警察が言った通りに書け」と言われても、ジェイクは「僕はそんなことをするために入社したんじゃない。真実を書くのが仕事なんだ。正義が行われなければ」と感じます。ジャーナリズムについて学んだことで、そうしたジェイクの気持ちが理解できました。

そして日本でも、日本人のジャーナリストと一緒に過ごしました。早朝の寒い中、告発されている会社のCEOの家へ行き、何とかコメントを取ろうとしたんです。

ロサンゼルスでは、人々を取材して回ったりもしました。話したくないと言われても、「お願いします、コメントが必要なんです! 上司にクビにされてしまうんです」と言い訳をしたりして。居心地は最悪でしたが、これがジャーナリストというものなんだと思いました。

だから第1話を撮っている時、マイケル・マン監督は「わたしたちがやったことを覚えているか? それを今やるんだ」とわたしに言いました。

マイケル・マン監督との仕事は素晴らしかったです。なぜなら、彼はわたしに役に本当に自分を没入させる機会をくれたし、撮影時には、それがリアルだと感じられるようにしてくれたからです。

TOKYO VICE: アンセル・エルゴート

Q:日本語が本当にお上手ですが、早期習得のコツは?

ありがとうございます(笑)。でもまだまだだと思います。毎日、最高の先生と勉強しました。毎日4時間勉強して、今も勉強しています。セリフも役に立ちました。なぜならセリフを自分のものにすると、実生活でも使ってみたりできるんです。

例えばバーに行ったら、「タバコ吸ってもいいですか?」と言ってみたり。これは最初のシーンのセリフです。「手伝って」「手を貸そうか?」というのもセリフで学びました。

現場でセリフが変わることもあるのですが、わたしはそれが好きでした。いつも新しい言葉を勉強しています。それに加えて、英語のセリフのシーンでさえも、わたしは日本語で学びたかったんです。

台本では英語のセリフも、日本語で覚えました。特に(渡辺)謙さんとのシーンは。リアルなジェイクを演じるために、できるだけ日本語を使いたかったんです。

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Q:東京で、日本で撮影したからこそ受けたインスピレーションはありますか?

日本の文化から多く影響を受けたと思います。例えば、合気道をしました。養神館で合気道ができたのはとてもいい経験でした。日本人は細かいことにも気を配り、どんな仕事も一生懸命します。

いつもおかしいなと思うのは、日本の「シェイクシャック」はアメリカの「シェイクシャック」よりずっと美味しいってことなんです(笑)。10倍美味しい(笑)。日本ほどよくないから、今やもう、アメリカで「シェイクシャック」は食べられないですもん。

そうしたことが、僕を常にインスパイアしました。そういうわけでジェイクは日本へ来たのだとね。日本人は100%一生懸命で、細かいことにも気を配ります。ジェイクも気を配ります。

それに、わたしは皇居も大好きです。全てが完璧に手入れされています。アメリカではそんなことしません。すてきな公園はあっても、手入れして、掃除をして、こんなに完璧にする、ということはしません。それは日本だけです。そうしたことは常にわたしのインスピレーションとなりました。

《photo:映美》

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