日米の才能が集結した超大作ドラマ・シリーズ「TOKYO VICE」の全貌に迫る全5回の連載の第3弾では、生ける伝説マイケル・マン監督をフィーチャー。『ヒート』『マイアミ・バイス』『コラテラル』『インサイダー』『ラスト・オブ・モヒカン』など数々の名作を世に送り出してきたマン監督の仕事術とは?
「TOKYO VICE」において、マン監督は作品の色を決定付ける第1話で自らメガホンを取ったほか、全8話のエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。自らオーディションを行って自身のビジョンを体現することができる実力派のキャストを集め、衣装やロケーションなどビジュアルにも徹底的にこだわった。だからこそ、これぞマン監督というべき重厚感とスリルに満ちた「TOKYO VICE」の世界観が出来上がったのだ。
中でもマン監督がこだわったのは、リアルな東京を撮影することだった。東京は“世界で最も撮影が難しい都市”といわれているだけに、ロサンゼルスでは日本の総領事とランチをして根回しをした。また、小池百合子都知事との面会を申し出、表敬訪問という形だったのにもかかわらず、都知事との立ち話で撮りたい場所を直談判した。その後は渋谷区長のアポを取るなど、自らが先陣に立ち、次々と不可能を可能にしていった。
現在79歳のマン監督だが、撮影現場では年齢を一切感じさないほどエネルギッシュ。立ちっぱなしで走り回り、時には自らカメラを担いで最高のショットをさぐる。一切妥協せず、隅から隅までこだわる巨匠の姿がそこにはあった。
そうしてマン監督が撮り上げた東京とそのアンダーグラウンドで生きる人々の物語は、リアルでありながら圧倒的なカッコよさを放っている。エグゼクティブ・プロデューサーの鷲尾賀代は「現場にはモニターが二つあるのですが、マイケルが撮ると、どっちをメインに使うのかわからないくらい両方ともカッコよくて。二つ同時にドラマができちゃうんじゃないの!? というくらい。彼の頭の中には理想の画が全て入っていて、それを全部実現しようとしているのだと感じました」とその仕事ぶりに衝撃を受けたことを振り返る。マン監督のプロ根性はキャスト陣のみならず、現場を共にした日本人スタッフたちにも影響を与えており、それは日本の映像業界自体の底上げにもつながりそうなほど大きなものだったという。
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