ジェイクの先輩記者・
Q:本作に参加することになった経緯を教えてください。
アンセル(ジェイク役のアンセル・エルゴート)主演で「TOKYO VICE」という作品が制作されると聞き、オーディションのお誘いをいただきました。
ただ、セリフが3か国語で書かれており、自分にはちょっと大変な作品になるかもしれないとも思っていました。
ですが、マイケル・マン監督がとても情熱的な人で、オーディションの時から詠美というキャラクターの演出をたくさんしてくださったので、次第に自分も「この役をやりたい!」という気持ちがどんどん強くなっていったと思います。
自分に演じられるのだろうかと躊躇していたところから、少しずつ監督に引っ張っていってもらったという感覚でした。
Q:実際に撮影に入ってからのマイケル・マン監督の演出はどうだったのですか? マン監督がメガホンを取った第1話では、菊地さん演じる詠美が新聞社で置かれている立場というのがよくわかるようになっていたと思います。
マイケル・マン監督は本当に作品に対して情熱を持っている方で、わたしが演じた丸山詠美というキャラクターがなぜ葛藤しているのかといったことについても、すごく細かくアイデアや考えをまとめたノートをいつも持ち歩いていらっしゃいました。
1990年代、今以上に女性が社会で活躍することが難しい時代に、詠美は男社会の典型であるような新聞社で働いていました。
そんな、彼女が自分のアイデンティティを押さえつけなければいけない環境で、どうやって女性としてチーフキャップまで上り詰めたか、どんな志を持っていたのか、さまざまな質問にもマイケル・マン監督はいつも明確に答えてくれました。
そして、自分でもリサーチをしたり、実際のジャーナリストの方にお会いして実際のお話を聞いたりして、皆さんに助けてもらって詠美という人物を作り上げていきました。
Q:1990年代の新聞社の中で女性として戦う詠美を演じて、思うところはありましたか?
丸山詠美は強い女性だと思います。女性が生きづらい時代と場所だったからこそ、負けないでやっていくにはどうしたらいいのか。彼女は上司に1言われたら10以上やるなど新聞記者としての志が誰よりも強く、媚びることではなく、男社会を逆手に取ることで生き延びようとしたと感じました。
そういった意味で詠美はすごく強いキャラクターで、演じていてとてもやりがいがありました。彼女のように強いキャラクターに出会えることはとても珍しく、大切に演じていこうという気持ちが高まりました。
社会で生きるには、誰しも自分のなかで起きていることをぐっとこらえて、戦っていかないといけないこともあると思います。だからこそ、皆さんにも彼女の気持ちにリンクしていただけるとうれしいです。
Q:主演のアンセル・エルゴートは日本語がすごく上手でしたよね。
英語が“おなか”から出す言語である一方、日本語は“口の中”で起きている感じの言語だと思うのですが、アンセルは音を聞いているうちに、それを自分で発見して、すごく上手に使いこなしていました。
わたしも英語の現場に行くと言葉の壁にぶちあたり、ストレスを感じることもあるのですが、アンセルは一人で日本にやって来て、大きな重圧がかかっていたはずなのに、それでも一生懸命、輪の中に入って行こうとする姿はジェイクそのものでした。日本語の上達も早かったですし、すごく尊敬しています。
Q:彼と先輩後輩という間柄を演じていかがでしたか?
先輩後輩とはいえ、アンセルがとっても大きくて(笑)(※アンセルは身長193センチ)。どうしても見下ろされてしまうので、どうやったら上司として彼より大きく見せられるかという点はいろいろ工夫しました。
結局は、ピュアにぶつかって来てくれる彼をしっかり受け止めていく、ということだと考えて、意識して演じています。
Q:菊地さんにとって、本作の一番魅力はどこにあるのでしょうか? 映画ではなく全8話のドラマというフォーマットを取ったからこそ、一人一人のキャラクターを掘り下げられていると思うのですが。
各キャストが演じたキャラクターの背景がすごくしっかり描かれているところが魅力だと思います。回を進めるごとに「そんなことがあったのか」「だから彼はここに立っているのか」という背景が徐々に見えてくるので、ストーリーにどんどん厚みが出てきます。
わたしが演じた丸山詠美と、アンセルが演じたジェイクの関係が少しずつ築かれていく部分や、刑事たちと闇社会の人々の関係が少しずつ明らかになっていくというところは、とてもよく描かれているので、皆さんに楽しんでいただけるのではないかと思います。
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