若きヤクザのリーダー・
Q:本作に参加することになった経緯を教えてください。
マイケル・マン監督のオーディションを受けました。マン監督とは何度も話をさせていただきました。ただ、衣装合わせを行うタイミングになっても、出演が決定したとは言われなくて。
後に「初めて会った瞬間から君に決まっていたよ」とマン監督に教えていただいたのですが、僕が「佐藤役に決まったんですよね?」と聞いても、撮影当日まで「わからない」と言われ続けていました。
Q:佐藤役に決まりそうだという手応えはあったのですか?
マン監督とオーディションをした後、その日に再度オーディションに呼ばれて、ホステスのサマンサ役のレイチェル・ケラーさんとオンラインでお芝居した時に、「いけるのでは」と思いました。
ただ、オーディションで僕が受かりそうだと思った時は受からないことも多く、海外との合作ということで勝手がわからない部分もあり、手応えは自分なりにありましたが、ギリギリまでドキドキしていました。
それに、最初は作品の詳細がわからない中でのオーディションだったのですが、マン監督に会うとわかってからは「(役を)獲りにいきたい」と思うようになっていたので。とはいえ、そう思って獲れるものでもないので、運が良かったと思います。
Q:マイケル・マン監督とは撮影前、どんな話をしたのですか?
役についてだけでも、何度かにわたって計10時間以上お話しさせてもらったと思います。佐藤というキャラクターの過去や、彼の過去と僕の過去に共通するものがあるのかといった話から、監督がこの作品を撮るまでにどういう人生を送って来たのか、僕らが出会ってこれからどうなっていくのか、といった話まで。
そういう話をたくさんしていただいて、すごくワクワクしましたし、その時のマン監督の目も覚えています。鋭いのですが目の奥が優しくて、何か大切なものをもらった気がします。
Q:作品以外のことまで、腹を割って話すことができたわけですね。
そうですね。プロデューサーやメイキングのカメラの方々が部屋から出ていかれて、マン監督と通訳の方と僕だけでお話をさせていただくこともありました。まだ台本をもらっていなかった時には、佐藤というキャラクターを口頭で細かく説明していただきました。
Q:実際の現場でのマン監督の演出は、どのようなものでしたか?
めちゃくちゃ細かく演出される方でした。
例えば衣装だけでも、襟のちょっとした角度、素材、丈、色味、照明に対する照り返しまで気にされていて、5回くらい衣装合わせをやっているのに、現場でも3~4回衣装が変わることもありました。とても細かいのですが、話をしていると監督の欲しているものがわかるので、こちらも刺激的で楽しいんです。
正直なところ、最初は、世界的な巨匠ですから、この作品にどれくらい力を入れてくれているのか、僕の意見を聞いてくれるものなのかといったことに少し不安を感じていました。でも撮影現場では、真冬の神奈川の山奥みたいな場所でも、半袖で誰よりも汗をかきながら動き回って声を出していらして。
監督の指示通り以外のことが起きたとしても、「最高だった」と声を掛けてくれますし、肉体的にも精神的にもしんどいはずなのに、監督が現場で一番楽しそうにしているから、僕もパワーをいただいた感じで。
芝居の指示を受けた際に監督の台本が見えたのですが、見たことないほどたくさんの書き込みがありました。だから監督の言うことなら信用できるし、やってみようと心から思えましたね。
Q:笠松さんが演じた佐藤は若きヤクザのリーダーですが、主人公の新聞記者ジェイクとも意気投合することになります。どのような役だと思って演じられたのでしょうか?
いろいろな意味で迷っているアンバランスなキャラクターだということは、マン監督もおっしゃっていました。それは、1話目の刺青などでも表現されていて、次第に明らかになっていくと思います。
佐藤の考えていることや根幹に抱えた闇のようなものも理解できましたし、アンバランスさというものは、僕自身とリンクするように感じる部分もあって、いいタイミングで出会えた役だなと思いました。
スタッフの皆さんとお話していても、佐藤というキャラクターが愛されているのを感じましたし、たくさんのお褒めの言葉もいただいたので、とてもうれしかったです。
Q:ジェイク役のアンセル・エルゴートとの共演はいかがでしたか?
アンセルとの共演は本当に楽しかったですし、刺激的でした。僕とは違ったタイプの俳優で、テイクごとに全然違う動きをするのが新鮮で。
彼は新聞記者の役だから、日本に来て自分で購入したカメラをぶら下げていて、撮影中にも撮るしぐさをすることがあったのですが、本当に撮っているのか芝居なのかはわからなかったんです。
すると撮影が終わる時に、撮った写真をアルバムにしてプレゼントしてくれました。一部はInstagramにも上げましたが、その2、3倍ぐらいの量があって。一緒に食事にも行きましたし、仲良くしていただきました。
彼はすでにスーパースターなのに、僕のことを「将さんの演技はとてもクールで魅力的だから、海外の人たちが見たらビックリして、みんなファンになるよ」とすごく褒めてもくれる。自信をもらえましたし、彼との共演はとても勉強になりました。
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