氷の微笑 (1992):映画短評
氷の微笑 (1992)ライター2人の平均評価: 4.5
4Kレストア版で甦るヴァーホーヴェンの代表作
ハリウッド時代のポール・ヴァーホーヴェンは、SFやアクション、サスペンス、ミュージカルといった極めてハリウッド的な娯楽映画の枠組みを応用しつつ、ヨーロッパ人の視点からアメリカ的な価値観の矛盾や偽善に批判の目を向けていたと思うのだが、この『氷の微笑』もまた例外ではないだろう。美しく聡明で狡猾で不道徳なバイセクシャルの悪女キャサリン・トラメルは、いわばアメリカ的な男性社会へのアンチテーゼである。その彼女が法の番人であるヒーローを手玉に取り、彼が内に秘めたセックスと暴力への衝動を掻き立て、男だらけの警察組織を混乱させていく。そこに本作の核心があるのだろう。改めて再見に値する作品だ。
いま観る&再評価するには抜群のタイミング!
こんなに面白かったっけ!? 92年の「流行映画」が、今回の4K版ではポール・ヴァーホーヴェンの語りの力を証明する堂々の佇まいで立ち現れる。初期オランダ時代の『4番目の男』をハリウッドに繋げつつ、シャロン・ストーン演じるキャサリンは、『エル』や『ベネデッタ』まで監督が描き続ける傑出したパワータイプのヒロイン像の筆頭でもある。
『めまい』を主な母体としたヒッチコック・フォロワー作としても、当時はデ・パルマの『ボディ・ダブル』と並び下世話な改造との評価が多かったが、いまはひたすら馬力を増したハイパーVer.としての迫力に驚く。パク・チャヌクの『別れる決心』にガチで与えた影響のでかさも再確認!