カフェ・ド・フロール (2011):映画短評
カフェ・ド・フロール (2011)ライター2人の平均評価: 3.5
言うなれば“赤い糸”で結ばれた愛の物語
‘60年代のパリでダウン症の息子を懸命に育てるシングルマザー。現代のモントリオールで運命の人と巡り合い再婚した男と、離婚の痛手から立ち直れない元妻。この全く異なる時代の、一見すると無関係に思える2つの物語が、やがて意外な形で結びついていく。
障害者への偏見や差別から幼い息子を守る、気丈な母親を演じたヴァネッサ・パラディが素晴らしい。’60年代の懐かしい雰囲気も丁寧に再現されているし、2つの時代を繋ぐ音楽の使い方も巧みだ。
ただ、恐らく結末への賛否は少なからず分かれるだろう。なんとなく、そういうことだろうなあ…と中盤辺りから気づくのだが、それにしてもちょっとベタ過ぎでは?と思えてしまう。
迷宮から脱出する鍵は音楽にあり
現代のカナダ、モントリオールと、1960年代のフランス、パリが時空を超えて結びつく。不可思議なミステリーに彩られた本作は、見る者の知的好奇心を確実にくすぐる。
現実と幻覚が行き交うドラマはパズルのようで、観客は自分の頭でそれを組み立てねばならない。俊英ジャン=マルク・ヴァレは『ダラス・バイヤーズクラブ』とは異なる話術で、観る者の頭脳を挑発してくる。
謎解きのひとつのヒントとなるのは音楽。プログレの大御所ピンク・フロイドの楽曲はもちろんだが、UKニューウェーブを代表するバンド、ザ・キュアーの数曲の起用も効果的だ。UKロック・ファンならば、本作にこめられた切なさをぞんぶんに味わえるはず。