クロニクル (2011):映画短評
クロニクル (2011)ライター2人の平均評価: 4.5
この激しくも悲しい思春期SFが限定公開で終わってはいけない!
またもPOVのファウンド・フッテージものか…という一言で片付けられることなく全米で社会現象化したのは、驚き以上に思わぬ切なさに満ちていたからだ。『キャリー』のキャッチコピーを引用し「アンドリューをいじめないで! 彼が泣くと恐しいことが起こる…」と語りたいほどに激しくも悲しい思春期SFは、鬱屈した高校生が、失業中の父との確執、病床の母への思慕、虐めに遭う学校生活といった日常をビデオカメラで撮影していく。そして得てしまった強大な特殊能力。青年は持て余し暴走する。一人称の主観撮影映像という手垢の付いた設定は、カメラをも念動力で動かす発想によってまんまと更新され、三人称映像や監視カメラ映像へスムーズに移行し視点は拡がりを見せる。
『パラノーマル・アクティビティ』はスピルバーグの助言でエンディングを差し替えることによって恐怖が増大したが、本作の後半はあの衝撃度を100倍に増幅させる。ティーンの内的葛藤の発露が、『AKIRA』をも凌ぐ壮絶な超能力バトルに発展するのだ。このセンス・オブ・ワンダーな思春期SFが、劇場パンフすら制作されない首都圏限定2週間公開なんて日本の映画界はどうかしている。
危う過ぎて目が離せないテレキネシス少年暴走日記
全米の週末興行チャートで初登場ナンバーワンを記録して以来、じつに1年半以上を経ての日本公開。近年まれに見るイキの良いスリラーで、待ちに待ったという言葉がピッタリくる。
謎の物質に触れたことで念動力を身につけた高校生3人組の日常が、その中のひとりが持つビデオカメラ越しの映像で語られる、いわゆるファウンド・フッテージ・スタイル。そこにはスクール・カーストの生々しい実態も記録されており、その最下層に属するビデオカメラ少年はイジメの対象となっている。そのうえ家庭環境もヒドいので、身につけた念動力が暴走するのは必然的。そんな危うさを漂わせ、ピリピリとしたムードを高めながら、少年版『キャリー』と呼びたい物語はスリルを加速させる。
3人の少年の念動力の強さに個人差がある点も面白く、皮肉にもこのビデオ少年のパワーがもっとも強い。そういう点でも緊張感にあふれ、目が離せない快作。限られた映画館でのみの上映であることが惜しい。
なお、暴走少年を演じたデイン・デハーンは『アメイジング・スパイダーマン』の続編にハリー・オズボーン役で出演する注目株。ぜひチェックしておきたい。