デッドマン・ダウン (2013):映画短評
デッドマン・ダウン (2013)国際的キャストの共演で目を引くのはイザベル・ユペール
裏社会の大物に妻子を惨殺された男が組織に潜入し復讐を企むが、不幸な女性と知り合って云々といったストーリーに新味はない。上手くやらないと凡庸になりそうだなあという懸念は、残念ながら的中。全体的にテンポが悪く、特にコリン・ファレルとノオミ・ラパスは個々は悪くないのだが、2人の間にケミストリーが感じられないのでロマンスの要素が盛り上がらず中盤がまったり。そしてテレンス・ハワードの悪役は、何だかいい人そうなのだった…。
そんな国際的キャストが共演する中、出番は多くはないにも関わらず印象に残るのが、ラパスが演じるヒロインの母親役のイザベル・ユペールだ。設定的には娘を愛する普通の母親。が、他のステレオタイプな登場人物にはさして興味がわかない一方、彼女にはどんな過去があるのか、どんな人物なのだろうかと不思議なほど想像力をかきたてられる。アパートの部屋で脚を組んで椅子に腰掛けぼんやり空を見つめているだけで、目が吸い寄せられてしまうアンニュイな雰囲気に漂う色香! 否が応でも目を引くユペールの稀有な魅力がよくわかる一作。