ギリシャに消えた嘘 (2014):映画短評
ギリシャに消えた嘘 (2014)ライター2人の平均評価: 4
今年は『約束の地』もあるし、V・モーテンセン祭り、蔵出し御免
というわけで、V・モーテンセンは本来、荒れ野に放つべきなのだが、本作では古代ギリシャの遺跡アクロポリスをはじめ、異国情緒溢れるロケーションに立たせている。全身白スーツと白のパナマ帽で。眩しいくらいのカッコよさ。しかし案の定、(心の)荒れ野へと引っ張られていき、最後にはトルコ、イスタンブールの裏路地を逃げまわる。
注目しておきたいのは1962年という時代設定。1960年には、英国の植民地支配から独立したキプロスをめぐってギリシャとトルコが対立しており、ここでもモーテンセンは民族間の紛争を背負っている。ラストは『第三の男』を援用、ただし悪漢ハリー・ライムよりもだいぶ小物であるのだけれど。
異国情緒溢れるクラシカルなサスペンス
どことなく「太陽がいっぱい」を彷彿とさせるのは、なにも原作が同じP・ハイスミスだからというだけではないだろう。’60年代特有のエレガンスを丁寧に再現したクラシカルな雰囲気、太陽の眩しいギリシャやトルコを舞台にした異国情緒溢れるロケーションなど、往年のヨーロッパ映画を愛するファンには心躍るような魅力が満載だ。
加えて、ヒッチコック風のスリリングな逃走劇は、その過程で複雑に絡まっていく男女3人の愛憎関係との相乗効果で、ピリピリとした緊張感が最後まで張り詰める。夜のイスタンブールの裏路地を駆け巡るラストのどんでん返しも見事。ニヒルな詐欺師を演じるヴィゴ・モーテンセンの男前ぶりにもシビレる。