セレステ∞ジェシー (2012):映画短評
セレステ∞ジェシー (2012)ライター2人の平均評価: 4.5
社会的な「成熟」にまつわるビタースウィートな恋愛劇
これは受け手の年齢、世代、人生観や恋愛観のタイプによって、かなり評価が分かれるかも。おすすめしたいのは自分がモラトリアム人間、つまり「大人になりきれない大人」という自覚のある30代~40代の観客(笑)。メインモチーフとなるのは男女間の友情だが、まだマッチョイズムの強い『恋人たちの予感』(89年)や、ジェンダーの壁に斬りこむ『ベスト・フレンズ・ウェディング』(97年)と異なり、社会的な「成熟」という問題を扱っているところに今の時代の気分がある。その意味では自己中なアラフォー女性の空回りを描いた『ヤング≒アダルト』(11年)に近いだろう。加えて本作の美点はハリウッド的なラブコメではなく、インディペンデントの散文的な(SNS的な?)親密さや繊細さがあること。観賞後もビタースウィートな味わいと相まって、オープニングに流れるリリー・アレンの名曲「リトレスト・シングス」が脳裏から離れない。
現代的カップルがぶつかる現実の壁
キャリア志向で合理主義者の妻セレステと、芸術家志望で夢想家の夫ジェシー。趣味も性格も笑いのセンスもぴったりな2人は最高の親友だが、残念ながら夫婦としては破綻寸前。いざ離婚を決意してはみたものの、お互いに居心地のいい友人関係までは解消したくない。男女の友情と愛情は同時に成立するのか?という普遍的なテーマを題材としながら、いつまでも学生気分が抜けない現代的なカップルの前に立ちはだかる現実の壁をほろ苦いタッチで描いたラブコメディ。子供みたいに夢を追い続ける男、一足早く現実社会との折り合いをつけてしまった女。そんな2人を対比しつつ、簡単には割り切れない感情のひだを下ネタジョーク満載で描く。インディーズ映画らしい小品佳作だ。