アベンジャーズ／エイジ・オブ・ウルトロン (2015)：映画短評

とにかく集まった面々が実力派俳優ばかりなので画の圧力はド派手なSFX以上に凄いのだけれど、ひとりひとりの物語を律儀に語ろうとするので(S.スカーシュゴードを迎えに行くだけのシーンなんて必要か？)とにかく散漫。ホークアイの家族愛やナターシャとバナーの恋愛模様も突っ込んで観たいものだが時間がそれを許さない。それは映画としてホメられたもんじゃないけれど、何年かに一度、世界観をまとめるお祭りとしては充分に機能しているし、少なくともこんなシステムを確立したジャンル映画がかつてなかったのは事実。新キャラではE.オルセンのシャーマンチックなオーラが突出しているが、これって「Ｘメン」のほうじゃないのかね。

　アクションヒーローの豪華競演を楽しむという基本は前作と変わらない。市街地を縦横無尽に駆け回り、連係して敵と戦うヒーローの活躍ぶりは今回も圧巻。

　面白いのはアイアンマンこと、トニー・スタークの立ち位置。『アイアンマン３』から、このキャラはヒーローの割には少々偏執的だなと思ていったが、今回は“俺たちがいなくても平和が維持できるように”という思いが先走り人工知能を開発。それが結果的に人類の脅威となってしまうのだから、迷惑な話ではある。

　マインド・コントロールされていたという言い訳も通用するが、アベンジャーズの一員としてはうかつ過ぎる気も。それが許せるかどうかで評価が変わってくる。

　およそ３年ぶりのマーベル・ヒーロー競演作。世界平和のために開発された人工知能が究極の解決策、つまり愚かで野蛮な人類の抹殺を企てる。
　まあ、基本的には前作と同じくスーパーヒーロー大集合のお祭り企画なので、深刻そうなストーリーにもさほど深みは感じられない。なんというか、駆け足のダイジェスト版といった印象。これはこれでポップコーン･ムービーとしてはアリだと思うけれど、アメコミにもスーパーヒーローにも思い入れの薄い筆者には、子供向け特撮物の延長線上としか思えず。
　なお、TVドラマ『エージェント・オブ・シールド』シーズン２の後半が本作と同時系列の話なので、ファンなら併せて見るのも一興かもしれない。

一人でも最強なヒーローを６人も結集させたシリーズの最新作は、物語もアメコミものには珍しく（？）込み入っている。勧善懲悪な展開と華麗なるアクションを見れば満足な子供を相手にしてないのは明らかで、オタクな大人向けのコアなネタが満載。ヒーローの過去や私生活、恋愛に心の闇はもちろん、人工知能の合理的すぎな思考や双子ヴィランのトラウマと盛りだくさんすぎて話を追うのにてんてこ舞い。マーヴェル・ユニヴァースを熟知してない人は予習すべき？　物語を楽しむのに事前ネタバレはしかし、本末転倒か。悩みどころだ。１シーンしか出演しないスターも多く、華やかなのはいいんだけど、あだ花的な印象は否めない。もったいない。

　各キャラのシリーズも本数が増えた今、このスーパーヒーロー集合映画は、作品として成熟期を迎えた。まず、各自の能力は紹介済みなので、見せ場は個人ごとではなく、全員の動きを連ねてひとつの大きな見せ場として描かれる。ヒーロー全員が１枚の大きな画にピタリと収まって快感倍増。次に、各自の個性を堪能させてくれる場面が増加。予告編にもある、各キャラがムジョルニアを持ち上げようとする場面がその筆頭。戦闘中のちょっとした会話にも、キャラの個性が反映されている。そして、実はテーマはシリアスなのに、映画のトーンが微塵も深刻にならない。ギャグも増量。今、スーパーヒーロー映画の流れは、この方向にあるのに違いない。