インポッシブル (2012):映画短評
インポッシブル (2012)ライター2人の平均評価: 5
スペイン映画界の威信を賭けた、感ありありの大災害映画。
ワッツ&マクレガー夫婦と息子たち(長男は今やスパイダーマン)がスマトラ沖地震の巨大津波に呑みこまれる。クレジット見て愕然なのは、ほぼハリウッドの力を借りていない!「痛い」にもホドがある特殊メイクもスペイン語圏製、ハッタリ効かす頃合いなどメジャー感覚が備わったJ.A.バヨナの才能が開花した格好だ。タイ映画界も全面協力しているが、キモとなる箇所で俯瞰をぶっこんでみたり、こんな画がどうやったら撮れるのか、というシーンが頻出。CGじゃないよコレ。ホントにオープンで創ってるんだろう。クライマックスの予定調和は本当なら興醒めだけど、ここまで周到に準備されると優しい気持ちになるパニック巨編。
人間は生きている限りその“生命”を全うせねばならない
タイのスマトラ島沖で地震による津波に巻き込まれた一家の実話。なによりもまず、津波の圧倒的な描写に息を呑む。突然襲いかかってくる巨大な波の恐怖、なすすべもない人間の無力さ。とにかく痛い、苦しい、怖い。これほど臨場感をもって自然災害の凄まじさを再現した作品は他にないだろう。だからこそ、この悪夢を生き延びたことの奇跡が実感として伝わるし、離れ離れになった家族が再会するまでのドラマに説得力が生まれる。安易なお涙頂戴の感動ドラマにしなかった点も偉い。でなければ、実際に津波で犠牲になったその他大勢の命に対して失礼であろう。人間は生きている限りその“生命”を全うせねばならないことを改めて教えてくれる。それを身をもって示す母親を演じたナオミ・ワッツがまた素晴らしい。