ラスト5イヤーズ (2014):映画短評
ラスト5イヤーズ (2014)ライター2人の平均評価: 3
「男と女の間には深くて暗い川がある」んだよ
結婚生活が破綻した男女の心情を真逆の時間軸で描くという手法がまず斬新だ。失った愛にとらわれたままの妻と過去を忘れて前に進む夫の比較であり、愛に対する男女の考え方(感じ方)の差が浮き彫りにされる。台詞はほとんどなく、それぞれの思いを歌にする正統派ミュージカル形式なのでアナ・ケンドリックとジェレミー・ジョーダンが朗々とした歌声を響かせるが、私の頭に浮かんだのは加藤登紀子の名曲「黒の舟歌」! 男と女って一生相容れないのだね。しかも夫婦がすれ違っていく状況がかなりリアルに描かれるので、見ていて胸がチクリチクリ。ちょっとした綻びも積み重なると修復不可能になるという学びにもなるかも。
全編2人の歌のみ。そこに細部を盛り込む体験が新鮮
全編、主人公2人が歌うのみ。歌だけでは、感情の細やかな部分は描けないのではないかと思ったら、逆だった。2人の歌を聞きながら、ふと気づけば、その歌詞の行間に細かな部分を好きなだけ盛り込んでしまっているのだ。この体験が新鮮。それができるのは本作が、2人の男女が出会って恋に落ち、小さな行き違いが重なって、やがて別れなくてはならなくなってしまう、そんな誰もが経験したことがある、普遍的な物語を描いているからだろう。ポイントは、出来事が起きた順に描かれていないこと。出会いから別れまでの5年間の出来事がランダムに登場するから、幸福、不安、疑惑、悲哀、さまざまな感情の差異、振れ幅が、さらに際立つ。