百瀬、こっちを向いて。 (2014):映画短評
百瀬、こっちを向いて。 (2014)ライター3人の平均評価: 3
残酷な初恋だけど…キラッキラしてるな!
二股交際をカモフラージュするために、好きでもない男子と交際をする--。女子高生にして二番手を好むなんて末恐ろしき愛人体質と、導入は今どきの青春物語に隔世の感を禁じ得なかった。それを払拭させてくれたのが、俳優陣がちゃんとキャラクターたちの心の痛みを体現しているから。図らずしも恋愛ゲームに巻き込まれて心をかき乱されるノボル役の竹内太郎が、オバさん世代には愛おしくってたまらない。
その竹内の成長した姿を向井理、同じく石橋杏奈のその後を中村優子と共に違和感を感じさせない配役も効いている。最近、論外な漫画原作の青春映画が多いだけに、余計に丁寧な演出が際立つ、大人の観賞にも堪えうる良作である。
「恋愛って恐ろしいよ」で終わってどうする。
スールキートスとROBOT。この二社の作品が大好きな観客にとっては胸が苦しくなるほどかも知れないが、あいにく僕はほとんどの作品が我慢ならない人間。この卑屈でウジウジとした恋愛劇の、どこに共感しろというのか。ヒロイン百瀬は主人公に「この苦しみが判るようになればいいね」的な物言いをするが、それはお前が単に独善的だからだよと一蹴したくなるし、そうした青さゆえのジレンマをどこかに昇華させようとしないのが理解不能。そもそもこの歪んだ関係に(僕は微塵も純粋さなど感じない)まったくセックスが介在しないのが何より気持ち悪い。とってつけたような家庭の背景や、無理矢理感傷に持っていこうとするピアノ・ソロも笑止。
初恋は眩しくもあり、同時に残酷でもあり
恋をし、同時に賢くあることは不可能なり…とは古代ローマの劇作家シルスの言葉だが、それが初恋とあらば尚更だ。本作は誰もが一度は経験するであろう初恋の甘酸っぱい記憶を、その眩さも愚かさも残酷さも全て内包しつつ描く。そのある種の冷静な眼差しがあるからこそ、少しばかり特殊な恋愛模様にも難なく感情移入が出来るのだろう。
また、百瀬と神林先輩という対照的な女子2人を通じ、“女”という生き物の不可解さを捉えている点も秀逸。原作未読ゆえ比較は出来ないが、ここは女性脚本家ならではの鋭さを感じる。その百瀬役の早見あかりも適役。大胆不敵な逞しさと繊細な傷つきやすさの同居する思春期の少女を瑞々しく演じて好感触だ。