あさひるばん (2013):映画短評
あさひるばん (2013)殺伐とした時代に、あらゆる事に欲のない人情喜劇
昨今のテレビドラマも映画も、一般の人にまで分かるような芸能界のしがらみが見えるキャスティングばかりで、辟易している人も多いだろう。しかし本作は、國村隼&山寺宏一&板尾創路と実力者を主演に据えており、“大人の事情“とやらが全く見えない珍しい例だ。むしろ戦機はあるのか?と追及したいくらいだが、浅はかな商魂むき出しの大作より、本作の方がずっと愛おしい。
ここにあるのは、松竹伝統の人情喜劇の継承という映画愛のみ。『釣りバカ日誌』シリーズの漫画原作者であるやまさき十三氏が初監督を務め、社会の窓際にいるおっさん3人組が、ヒロインの恋愛成就を後押しするという、゛寅さん゛からの流れをくむ人情喜劇でほっこりさせる。とはいえ、冷静に考えればなかなか大胆な設定で、主演3人と松平健が同級生だとか、刑務所脱獄未遂事件も温情でお咎めナシとか、脱力系の笑いが満載だ。映画に刺激を求める人には物足りないかもしれないが、小ネタの連続がジャブのように最後に効いて来るかも?