フィルス (2013):映画短評
フィルス (2013)恐るべき罰当たり刑事のヤケッパチ大暴走
基本的には、昇進のために殺人事件の解決に勤しむ刑事の話である。ただ問題は、このジェームズ・マカヴォイ扮する主人公がとんでもない罰当たり刑事ってこと。普段から酒びたりのコカインまみれ。しかも女と見りゃ見境なしのヤリ○ンで、それでも飽き足らず自宅ではAV三昧、出張先では売春三昧。勤務中の違法行為や暴力行為も当たり前。そればかりか、気弱な正直者は虐めまくり、職場のライバルには失脚工作しまくり、ついでにゲロしまくりのオナラしまくり。要はろくでなしのクソ野郎なのである。
で、本作はそんな彼の心の闇へと入り込み、めくるめく狂気と暴力の世界へ観客を誘う。その混沌から浮かび上がるのは、ささやかな幸せをも奪われた人間の悲痛な魂の叫び…というかヤケッパチの雄叫び。唯一残された希望の光“昇進”に向けて暴走し、やがて崩壊していく主人公の姿に妙な共感を抱かずにはいられない。
キューブリックやギリアムに影響されたという監督の演出はシュールでドリーミー。もうちょっと過激でもよくない?と思いつつ、こんな毒気まみれのお話にデヴィッド・ソウルやビリー・オーシャンなどの爽やかな懐メロを散りばめるセンスは大好きだ。