遥かなる勝利へ (2011):映画短評
遥かなる勝利へ (2011)なりふり構わずとにかく生きろ!
はじめに申し上げておくと、3部作の完結編である本作は、少なくとも前作「戦火のナージャ」だけは予め見ておいて欲しい。その価値が十分にあることは約束する。
で、独裁者スターリンの粛清で失脚したロシア革命の英雄コトフ大佐とその愛娘ナージャの過酷な運命を描く最終作。前作ではスターリン時代のソ連という全体主義国家の生き地獄、そして第2次世界大戦の戦場における容赦ない殺戮地獄という底なしの絶望の中、地を這うようにして戦火をくぐり抜ける人々の辛酸をまるでスクリーンに叩きつけるかのように描いたわけだが、今回はそこからさらに“生きる”ということの意味と覚悟を見る者に問う。
人が人でなくなった世界で、再会を信じてがむしゃらに前へ進む親子。ミハルコフ監督は決して単純な善悪で物事を語らないし、ましてや理想主義的な平和論や博愛主義でお茶を濁したりなどしない。人間はいつだって善であると同時に悪であり、生きるということはすなわち戦いなのだ。苦難と残酷の歴史を歩んできた大国ロシアの68歳になる巨匠は、なりふり構わずとにかく生きろ!と激しく檄を飛ばす。その荒々しいまでの生命力とパワーに思わず言葉を失う。