キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (2014):映画短評
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (2014)ライター5人の平均評価: 4
古めかしい正義が体現する自由と民主主義の精神
70年近くも氷の中で眠っていた、清く正しく真面目なスーパーソルジャー、キャプテン・アメリカの前に今回立ちはだかるのは、言うなれば同時多発テロ事件以降のアメリカに蔓延する超国家主義と新保守主義だ。
古めかしい正義が現代の権力を蝕むニヒリズムに立ち向かうことで、自由と民主主義の原点を知らしめる。それもまた、ある意味で非常にアメリカ的なヒーロー映画の王道と呼べるだろう。
もちろん、娯楽作品としても優秀。肉弾戦を主体としたアクションは、CGスペクタクルの巨大なスケールにも迫力負けしない。内容的に玉石混合なアベンジャーズ・シリーズだが、本作のエンタメ性と社会性のバランス感覚の良さは特筆に値する。
時代遅れの誠実さと生身の接近戦が問いかけるアメリカの良心
凄絶を極めれば極めるほど観る者が引き気味になるCGアクションへのアンチテーゼが、この映画だ。主役をヒーローたらしめているのは、時代遅れの誠実さと頑強な肉体のみ。唯一の武器・盾を投げつけ、しかも律儀に回収してまた走る。CGを抑制した生身の接近戦が目まぐるしく展開し、活劇の醍醐味を堪能させる。マーベルは侮れない。
ストーリーは「70年代ポリティカル・サスペンス」の再生。敵が見えにくい時代の「悪」を突き詰めたリアリティ。本作の予習復習に、ロバート・レッドフォード主演『コンドル』(1975)はマストだ。米国史を超えて生きながらえるヒーローは、アメリカ映画史をも今に継承する役目を果たす。
体力勝負ヒーローの凄みを再確認させる重量級エンタメ
『アベンジャーズ』の中では派手な能力を持つ他のヒーローに比べて目立てなかったキャプテン・アメリカ。フツーの人間より体力が二回りほど優れているレベルでは不利だったか。そのウサ晴らしというわけではないが、看板を背負った本作では大活躍を見せてくれる。
戦艦からの人質救出や刺客との対決では動きの速さで目を引き、空の要塞での綱渡りのようなバトルで重量級の立ち回りを演じる。格闘バトルのヒーローとしての風格は十分だ。
白か黒かの高潔な性格ゆえに苦悩するドラマも見応えがあり、本作で描かれた陰謀が直結するという『アベンジャーズ2』に期待を抱かせる。政治的な匂いのするサスペンスも重量級で歯応えアリ。
古くさくてOK、正義を貫くのがキャプテン!
決してウソはつかず、不正は許さず、上司の間違いもはっきり指摘する。現実社会では “生きづらい”だろうキャプテン・アメリカ。白黒はっきりせねば気が済まないというか、古くさいというか……。そんな彼がS.H.I.L.D.の清濁併せ吞む活動ポリシーに翻弄される青臭い姿を見せつけ、観客にアメリカの良心を思い出させる狙いは大成功! 彼が疑問を呈する世界監視システムもエドワード・スノードン氏が暴露したSNSによる盗聴を彷彿させるし、その脆弱さもアメリカが抱える悩みとシンクロする。娯楽作でもテーマは深遠なり! でもキャプテンをサポートする元空軍兵が天使風な羽をつけているのは「アメリカ=神の国」みたいで怖い。
アクションはマーシャル・アーツになったけど【ネタバレ?】
めまぐるしい頻度でハナシを転がしていく「アベンジャーズ」シリーズ。もはや一作も見逃せない状況だが、これは今後の大筋に関わること間違いなし。だってシールドそのものが、ナチス起源の結社「ヒドラ(って、どう聞いても“ハイドラ”って言ってるけど…)」に牛耳られ、アベンジャーズの敵になるんだから。その裏組織の番長をリベラル派の代表格R.レッドフォードに演じてもらったことこそ本作最大のジョーク(と同時に『コンドル』へのオマージュとみた)。で、立ち向かうキャプテンはといえば、最新の強化服でなく第二次大戦当時の、国家正義を無自覚に信じていたころのボロ衣装。そんなところが21世紀マーベルの矜持だろう。