パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト (2013):映画短評
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト (2013)ライター2人の平均評価: 3.5
もっと怖いものなしだったはずだよ、B.ローズ。
永遠のキワモノというべき音楽史の異端児パガニーニを、超絶技巧ではあるが現代クラシック界では冷めた目で見られてるD.ギャレットが演じる、という意味ではまさに理想的な作品(ただし演技は稚拙)。でもイマイチ発想の大胆さが足りない。美化捏造はさほどないにせよ、この色悪を「真実の愛」云々に落とし込むのはつまらないでしょう。ラストで「ケン・ラッセルに捧ぐ」と出すなら、もっと下品に、放埓にやんないと!! パガニーニの命運を操る興行師(J.ハリス)が出てくるたびにシューベルトの「魔王」を響かせるのは笑えるが、その程度ではとても満足できないのがラッセル映画に毒された観客(特にクラシック好き)というものなのだ。
やはりB・ローズ監督はクラシック音楽映画に強い
さすが「不滅の恋 ベートーヴェン」という稀代のクラシック音楽映画をモノにしたバーナード・ローズ監督だけのことはある!と唸らされる佳作だ。
“悪魔に魂を売った”などと呼ばれた悪名高き天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの半生から、時代を遥かに先駆けた異端児の孤独な内面に迫る。現代のロック・スターにも通じるカリスマ性に焦点を当てつつ、しかしあくまでも時代物の雰囲気を損なわない演出のバランス感覚が見事だ。
プロの俳優ではない主演デヴィッド・ギャレットも十分に健闘しているし、もちろん彼自身の演奏する音楽も素晴らしい。しかし、御年70歳のヘルムート・バーガーには一瞬気付かなかった…(笑)。