ゴール・オブ・ザ・デッド (2014):映画短評
ゴール・オブ・ザ・デッド (2014)ライター3人の平均評価: 2.7
ゾンビか否か、そんなことが小さく思える怪作
ロメロ・マナーに則れば“単に吐瀉物で感染するのはゾンビじゃないだろ!”とツッコミたくもなるが、そんな細い点は見進めるうちにどうでもよくなってくる。
サバイバルする人々のメンタリティは『ショーン・オブ・ザ・デッド』に近く、ダメ人間たちが右往左往する物語。適度にグロくて、適度にユルい。このリズムに慣れれば、本作は大いに楽しめるだろう。
興味深かったのは、フーリガンがチャントを考える際に“人種差別的な物言いはチームの名に泥を塗るから止めろ”というところ。見るからにロクデナシ風の連中でも越えてはいけない一線を守っている点に、フランスのサッカー文化の成熟を見た気がした。
ノリ的にはコミカルな「デモンズ」
サッカーの試合でゾンビパンデミックが起きたら!?というアイディアがほぼ全ての作品。「ショーン・オブ・ザ・デッド」と比較する向きも多いだろうが、ノリとしては“コミカルな「デモンズ」”といった感じだ。
サッカー界の露骨な商業主義を揶揄したり、田舎の閉鎖性を茶化したりするジョークも大半が不発。それより、スタジアムに集まった大勢の選手や観客がドバドバとゲロを浴びせ合いながら感染していくパニックシーンや、終盤のゾンビ軍団VS人間のカテナチオなんかの方が、よっぽどバカバカしくて笑える。
ポップコーン片手にやんや突っ込みながら見るタイプの映画。底は浅いけど、とりあえず頑張ってアホやってるので許せる。
とにかく“感染”の汚さに笑えるが。
サッカーの前・後半戦になぞらえて、それぞれを別監督が分担するというアイディアは面白い。しかしどうせなら “ハーフタイム・ショウ”みたいなのもあればよかったのに。…というのは両者のテイストがさほど違わず「別に共同監督名義でいいじゃん」と思わせるほど一貫性がありすぎるから。相違といえばサッカーネタはほぼ前半で終了、後半はよりゾンビ・アクションに比重が傾くくらいか。ただ、地方都市の全産業がひとりの名サッカー選手に依存し、彼が首都チームに鞍替えしたとたん“裏切られた”と根こそぎアンチになる……そんな閉鎖社会へのおちょくりはフランス版『ショーン・オブ・ザ・デッド』と思わせなくもない。出来は遥かに甘いが。