DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う? (2014):映画短評
DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う? (2014)ライター3人の平均評価: 4.3
AKB商法に学ぶ“考える力“を身につける法
今までAKB48のドキュメンタリーは、゛偉大なるリアクション芸を見る゛と捕らえてきた。大人たちが仕掛けるドッキリにどんな反応を示すのか。ドキュメンタリーでは゛やらせ゛が問題となるが、 これほど大人たちが描いたシナリオが明確にある作品もないだろう。
しかし今回は、天候不良によるコンサートの中止に傷害事件という予測不能の事態が起こる。そこで発揮されるのが彼女たちの言動力。これまで、残酷な仕掛けも人気商売ゆえの非情な現実にも逃げずに考え、最善策を自分たちで導いてきた本領がこういう時に生かされるのだと気付かされた。
何より自分の言動に責任を持てず、影響力を想像出来ない政治家こそ本作から学ぶべし。
つか、観続けてきた僕はもはやファンなのかも。
ファンでもない僕でさえ、感情を激しく揺さぶられるこのシリーズ、今回のメインは大島優子の卒業だ。紅白での宣言直前、大島、高橋みなみ、そしてキャメラ(≒監督)三者の共犯者的な空気感から、対象に近距離で迫りに迫るキャメラが効果を発揮する。総じて涙の量も尋常じゃないが(大安売りでなく各人各様の意味あり)、美しいのは公演中止決定後の大島の泣きじゃくりか。理不尽な大人の要求に少女らが翻弄されるさまを捉えた、大組閣時の阿鼻叫喚も凄まじいが、その「理不尽な大人のプラン」側にありつつも少女たちへの感情移入顕著な高橋栄樹のスタンスが興味深い。ただ終盤の刃傷事件&総選挙はややおざなり、いずれ「完全版」が登場しそう。
間違いなくシリーズ最高傑作!
過呼吸を起こそうが、恋愛ネタで潰されそうになろうが、とにかく“前進する少女たち”を描き、戦争映画や宗教映画としても捉えられてきた本シリーズ。今回も初期メンバーの卒業に、荒天によるコンサート中止と、次々困難が襲いかかるが、その後、例の殺傷事件という誰もが想像できなかった展開が待ち受けるだけでも、そのヘヴィさは分かるだろう。
その一方、今回は監督自身がカメラを持って密着したこともあり、雨天で持ち歌をリハーサルする大島優子の姿から、若手メンバーの瑞々しい会話までも捉えている。つまり、高橋監督による前2作を超える衝撃に、1作目で見られた岩井俊二的キラキラ感が融合。間違いなくシリーズ最高傑作である!