アルゲリッチ 私こそ、音楽! (2012):映画短評
アルゲリッチ 私こそ、音楽! (2012)「女神」の娘として生まれて。
クラシック音楽好きにはたまらないシーンが続出するが、これは母親マルタのみを追ったものではない。一緒に暮らしたことがなくいまだ認知されてもいない父親と、幼少期からずっと演奏ツアーに連れまわされた母とのはざまにある監督自身が、改めて父母や異父姉妹との関係性を問い直そうと試みたエッセイ映画なのだ。それは原題が父の言葉であること(「忌々しい娘」という語には裏返しの愛情と、母親そっくりの顔立ちをした娘への皮肉が感じられる)、エンディングに父が弾くバッハが使われていることでも明白。『ニューヨーク←→パリ大冒険』の踊るラビのシーンでマルタの血脈を示しているのも、彼女の音楽性を知るうえで興味深い。
この短評にはネタバレを含んでいます