ヘウォンの恋愛日記 (2013):映画短評
ヘウォンの恋愛日記 (2013)ライター2人の平均評価: 5
「別れましょ。別れなくてもいいけど」(笑)
幾度も机に突っ伏して眠るヒロイン。そこにベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章がメインテーマのようにかぶさると、ホン・サンス好きならこれが「夢とのあわいの物語」なのだと判るはず。なぜならそのメロディは『アバンチュールはパリで』で幾度も鳴り響いていたものだからだ。酷似しているようでそれぞれ趣の異なる彼の映画は、昼となく夜となく呑みまくる以外、意外に作品間の直接的関連は多くないが、本作は終盤に登場する不倫カップルが『ハハハ』の人物だったりして例外的に他作を連想させる仕掛け。夢でも現実でも不倫の腐れ縁を断ち切れないヘウォンの孤独と焦燥感、つまらぬことで嫉妬に身を焦がす相手の教授が痛ましくもオカシい。
ダメ恋愛の女子映画。ホン・サンス式『緑の光線』か?
シネフィル人気沸騰の監督、ホン・サンスの凄まじく洗練された新作が2本セット公開。共にダメ恋愛が主題で、最近定番のキャラクター=「先生」と呼ばれる映画を撮ってない映画監督も登場するが、作風は対照的と言っていい。
『ソニはご機嫌ななめ』がホン・サンス式の生態観察を極めたコアだとしたら、こちらの『ヘウォン~』はややオーソドックスな「女子映画」。ヒロインの内面に寄り添う柔らかなタッチを見せるのだ。
冒頭にジェーン・バーキンがゲスト出演するが、本作はホン・サンス式「フレンチ」ラインの延長でもある。彼の重要な先行者はエリック・ロメールだが、これは女性の孤独を描いた点で『緑の光線』に最も接近した一本だ。