郊遊<ピクニック> (2013):映画短評
郊遊<ピクニック> (2013)必見。これは映画のひとつの臨界点だ。
90年代、『青春神話』『愛情萬歳』『河』といった眩い傑作群で登場した頃のツァイ・ミンリャン作品は、カメラの長回しと、時代と共に変化する都市生活者の宙吊り的なリアリティが有機的にぴったり一致していた。以降、彼は基本的に同じ主題を追求してきたが、ついに公式引退作となった『郊遊』では形式だけが突出している。
しかしそれは「主題の失効」を自覚した誠実さの表れだろう。完璧なサウンドスケープと共に提示される限界的ショットは、語りの全体構造に容易に寄与しない。もはや空間そのものを体験させるインスタレーション・アートに近い。ひとつのスタイルを押し進めた映画作家の臨界点=「極」を目撃できる極めて貴重な怪作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます