カムバック! (2014):映画短評
カムバック! (2014)ライター5人の平均評価: 3.4
ニック・フロストだからこそ成立する愛すべきコメディ
冴えない中年メタボ男がサルサ好きの美女に恋して一念発起、ダンスの猛特訓を通じて過去のトラウマやコンプレックスを克服し、やがて自信と誇りを取り戻していく。
ストーリーも登場人物も極めてありがちだが、主演ニック・フロストの憎めないキャラと体型が、本作を愛すべきロマンティックコメディとして成立させている。そもそも“おデブな俺が華麗にダンスを踊ったら面白くない?”という彼自身のアイディアが発端の企画だけに、ベタ過ぎる展開も狙い通りなのだろう。
天然ボケ気味なヒロイン役ランダ・ジョーンズの親しみやすさも魅力だし、ラテン男のステレオタイプを濃縮したカリスマ講師役イアン・マクシェーンも抜群の存在感だ。
踊れるデブ、ニック・フロストのチャームを再確認
ニック・フロストがサルサ・ダンサー役という一発芸的なアイデアの映画だが、おデブ中年もやればできる! というか、意外にも熟練のステップを見せてくれるから役者は侮れない。冴えない男が美女のハートをゲットするために頑張る映画は山ほどあるが、主人公ブルースはフロスト同様に人好きのする真摯さが魅力。だから観客はチーム・ブルース入りするし、彼の恋を成就させたいと願うのもポイント。クリス・オダウドが自称“セクシー”なライバルを漫画っぽく演じているのも効いている。根拠のない自信は薄っぺらに感じるけど、自信たっぷりな男性は素敵に見えるもの。魂(エル・コラソン)を燃やすブルースの熱血サルサに胸が高鳴ったよ。
ニック・フロストという肉体を得て成立した庶民派劇
メタボな中年男に激しくサルサ・ダンスをさせる!という、ワンアイデアから始まったコメディ。確かにこの案自体は面白く、ビジュアル的には引きがある。
今やイギリスを代表するコメディ俳優と言ってもよいニック・フロストが発案し、みずから主演を務める。そんな彼の人好きのする個性が活き、ロマンスや友情のエピソード身も絡んで、物語は庶民派コメディという、うまい落としどころを得た。
惜しいのは、元サルサ王者という設定ほどフロストのダンスが映えないこと。彼自身、猛特訓を積んだ成果を見せて頑張ってはいるが、他のダンサーたちと見比べると見劣るのは否めない。
もちろんサイモン・ペグもカメオ出演!
ニック・フロストといえば、友人サイモン・ペグ、エドガー・ライト監督と組んだ「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホットファズ」「ワールズ・エンド」の人気者。その彼が発案、初主演したのが本作。彼がいつものトリオを離れてやりたかったのは、なんと、ダンス映画。フロストがあの体型で、サルサの華麗なステップを踏む---このビジュアル・インパクト! 自分の強みを分かってる!ここでフロストらしいのは、そのステップを特殊効果で描くのではなく、実際に半年以上も特訓して実現したこと。それは彼曰く「サルサをギャグにするのではなく、敬意を持って描くため」。こういう誠意が彼含むあのトリオの魅力なのだと痛感。
ティト・プエンテにウィリー・コローン…やっぱいいね!
エドガー・ライト軍団の最新作だが、早い話が『Shall we ダンス?』系統。今回エドガーとS.ペッグの直接関与はなく相当にベタである。とはいえ、メタボキャラのN.フロストがサルサを踊りまくるってだけで憎めないし、美人上司(クインシー・ジョーンズの娘、ラシダ)が’80年代キューバン音楽好きと知るや、自宅に眠るLP盤を掘り起こしてミックス・テープ(なんとカセット!)作り。昔のように踊れるようになろうと25年前に不義理をした師匠の門を再び叩く…なんて展開も可愛い。実はその頃、最もサルサ音楽にハマっていた僕としては、かなり「判ってるね!」度の高い選曲が一番ポイント高かったりするが。