ぼくを探しに (2013):映画短評
ぼくを探しに (2013)ライター2人の平均評価: 3
「アメリ」好きな人なら楽しめるかも
「ベルヴィル・ランデヴー」のシルヴァン・ショメ監督が長編実写に初挑戦した作品。彼らしいシュールな設定やノスタルジックな味わいは健在だ。
幼少期に両親を失って言葉を喋らなくなった青年が、風変わりな隣人女性の淹れてくれるハーブティの効能によって、幼き日の過去を追体験していく。愛された記憶は人間を強くする、という普遍的なテーマを描いた作品と言えよう。
男性版「アメリ」とも呼ぶべきチャーミングな作風や、ベルナデット・ラフォンとエレーヌ・ヴァンサン演じる素敵なお婆ちゃんたちなど愛すべき要素は多い。ただ、ショメ監督独特のポップな持ち味が実写だと少なからず感情移入を妨げるようにも思える。
ここまで出来ても、ショメはやっぱアニメが本領だな。
S.ショメは実写を撮っても、リアリズムとファンタジーのあわいにある彼の世界観が崩れることがないのは、オムニバス『パリ、ジュテーム』でも証明されていたとおりだ。台詞よりも饒舌なパントマイム的表現(今回、主人公は喋れないという設定)、多様な音楽/リズムと物語との結合(本作自体が『ベルヴィル・ランデヴー』の一曲から発想されている)。もちろん“おばあちゃん趣味”も全開。ただしオチはよく考えりゃかなり鬼畜なのだが(笑)、トリュフォー映画のミューズB.ラフォンへの追悼の言葉とともに、夢のような浜辺のシーンがリフレインされるので後味はすこぶるよろしい。でも次はぜひアニメを!