最後の命 (2014):映画短評
最後の命 (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
脚本演出が物語を処理しきれていない感。
少年期に目撃したセックス事件がトラウマになった男性二人と、その二人に引っ張られて精神の均衡を崩す一人の女の物語。トラウマにあくまで抗うほうの柳楽優弥は“普通の役回り”ではあるが、最近のぶっ飛んだ役柄に共通する熱度と濃さに溢れている。なのに、トラウマに振り回され他人の人生まで狂わせる矢野聖人の演技は表面的かつ軽くみえて、本来は表裏一体の関係性にある二人が水と油に見えてしまうのが難、いまひとつの狂気が欲しかった(ただし比留川游は好演)。そもそもこの物語、ミステリ的な趣向で語られるのが薄っぺらくみえる要因かも。いっそ原作を解体し、人物の心象にダイレクトに肉薄したほうがより映画的になったろう。
トラウマという名の長いトンネルの先に何が見えるのか
とある殺人事件をきっかけとして、幼い頃に見てはいけないものを見てしまった2人の若者の、胸の奥にしまっていた深いトラウマが炙り出されていく。
ひとつの出来事が全く違う形で主人公それぞれの心に暗い影を投げかけ、それがさらなる悲劇の連鎖を生み出す。ここでは性犯罪を重要なキーワードとしているが、これを例えば児童虐待やイジメ、さらには事故や天災などと置き換えることも可能だろう。
人間は過去の経験を引きずる生き物であり、消したい記憶への対処は人によって違うかもしれないが、しかし誰もがその暗闇から抜け出そうと抗うもの。それが生きるという本能であり、本作はその核心と真摯に向き合っている。