ソウォン/願い (2013):映画短評
ソウォン/願い (2013)名優たちが真摯に好演。でも子役のイ・レには敵わない。
直截的な猟奇描写は皆無。女児ソウォンが身体に受けたダメージは数語の台詞で語られるだけだが、それだけでじゅうぶん恐怖である。しかもその禍いは、やや下流に属する被害者一家の日常描写が淡々と積み上げられたのち突然見舞うものだけに、その理不尽さが観る者にどうしようもない絶望感を齎す。「なぜ生まれてきたのか」と自問する8歳児。「いっそ世界中の子供が同じ目に遭えばいい」と考えてしまったこと自体を自責する母。男性というだけで娘に避けられる父…。社会論は二の次に、イ・ジュンイクはあくまでこの家族の心象を丹念に追う。「希望」と「赦し」に帰着するのは事件が事件だけに甘くも感じられるが、それを誰も否定できまい。
この短評にはネタバレを含んでいます