美女と野獣 (2014):映画短評
美女と野獣 (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
悪趣味寸前の過剰な美意識が炸裂。
「待望の実写化」と謳ってはいるが「美女と野獣」といえばそもそもディズニー以前に、最高にファンタスティックなジャン・コクトーの歴史的名作ありき。ましてやC.ガンズは現代フランスきっての耽美幻想映画の奇才、コクトーを意識していないはずはない。しかしここにはオマージュという名の色目も伺えず、おそらくはまったく別のイメージで映像化に挑もうとした志や、良し! 徹底して過剰な悪趣味寸前のロココ嗜好、終局で炸裂する触手趣味がいかにもこの監督らしい。野獣よりもサディスティックなベルに意思だらけの目をしたレア・セドゥは似つかわしく、エレガントだがちょっと頼りない父親A.デュソリエも適役だ。
野獣の館の造形がフランス美術の底力を見せつける
この美意識は、ロココ様式。繊細かつ優美の極みにして、軽やかで明るい。フランスのおとぎ話を原型に、フランス出身の監督と俳優たちが、ハリウッド産とはひと味違う、フランス様式のファンタジー世界を作り上げた。野獣の住む館は、壁の外にも部屋の中にも植物があふれ、まるでフラゴナールの「ぶらんこ」の庭園のよう。ヒロインのドレスの腰の膨らみも、ロココの貴婦人たちと同じ。野獣の上着の袖口が画面に映るだけで、その装飾のディティールの豊かさに目を奪われる。
監督は「ジェヴォーダンの獣」「サイレントヒル」のクリストフ・ガンツ。この監督は、こういう現実世界とは別の異世界を構築するときに、本領を発揮してくれる。