天空からの招待状 (2013):映画短評
天空からの招待状 (2013)ライター2人の平均評価: 3.5
台湾の成熟した社会に羨望
タイトルからしてTV番組「世界遺産」のごとく、上空から美しき台湾を写した作品かと想像していた。これが大違い。工業廃水で汚染された川、開発で土が露わになった山肌など環境破壊が進む国土を見せつける骨太の告発ドキュメンタリー。それが100万人以上を動員。先の学生による立法院占拠事件しかり、台湾の人たちの問題意識の高さに羨望すら抱いてしまう。日本版が製作されたとしても、そうはなるまい。
忙しない日々を過ごしている我々は、せいぜい半径数mの世界しか見えていない。一度俯瞰から物事を見る大切さ。そんな単純で基本的な事を教えてくれる。発見と驚き。コレ、優れたドキュメンタリーの証なり。
俯瞰映像には圧倒的なものがあるのだが…。
ぜひ劇場スクリーンが視界いっぱいになる位置で浴びるように観るべし。そこらへんのネイチャー番組では絶対に味わえない、自然そのものが造りだした美(例えば海と川が混じりあう境目の色彩とか)が味わえる作品ではある。しかしだ。ただでさえ全篇に鳴り響く大仰な音楽が過剰なのに、さらに重なるあまりにもストレートな環境保護メッセージにうんざり。僕は台湾語版も観ているが、西島秀俊の美声をもってしても、説教口調なプロパガンダ的臭さは拭えない。自然破壊の権化のように捉えられる工場だって、撮りようによってはもっとカッコよく撮れるはずで、つまりは色眼鏡越しにこれらの映像を見せられている感じが終始鼻につくのだ。