世界から猫が消えたなら (2016):映画短評
世界から猫が消えたなら (2016)映画好きなら『メトロポリス』はスタンダードで観ようね。
曇天の逆光ばかり捉え、主人公の感情が揺れればキャメラも一緒にグラつくような愚鈍な演出と、台詞の薄っぺらさに辟易とする。安手の自己啓発本のように、イイこと言ってるつもりでいるけど内実はペラペラな、そんな言葉の垂れ流しに俳優陣の演技にまで頭が回らないほどだ(若き時代を演じる原田美枝子が異様なまでに美しいが)。脚本の岡田惠和はTV『ど根性ガエル』で世界から大切なものが失われていくことの悲哀を丁寧に語ったが、近似するテーマの本作ではそうした虚構のリアリズムが微塵も感じられない。電話が消えれば文具屋に、映画が消えれば本屋に変わるというのも乱暴すぎるギャグじゃないか。
この短評にはネタバレを含んでいます