この国の空 (2015):映画短評
この国の空 (2015)戦争によって壊された日常は2度と戻らない
空襲の相次ぐ太平洋戦争末期の東京を舞台に、戦時下における庶民の日常生活を19歳の平凡な女性を通して見つめる。
明日の命も知れぬ極限状態。平静を装いつつも人心は荒み、肩を寄せ合う家族や隣人の関係にもギスギスしたものがつきまとう。そんな中で健気に振舞うヒロインもまた、失われいく青春への焦りから妻子ある男性との不倫に身を任せる。
時代に翻弄された人々の複雑な胸中を丁寧に描きつつ、果たして彼らの苦悩や喪失が終戦でチャラになったのか?という問いを投げかける。古風な台詞回しを含めて当時の若い女性像を鮮やかに体現する二階堂ふみ、そんな娘を懸命に見守る母親役で会心の演技を披露する工藤夕貴が素晴らしい。
この短評にはネタバレを含んでいます