二重生活 (2012):映画短評
二重生活 (2012)中国4千年の“膿”が詰まった異色ミステリー
天安門事件を描き、中国政府から5年間の活動禁止処分を受けたロウ・イエ監督が新作で矛先を向けたのは、中国4千年の歴史が培ったダブルスタンダード。
高級車で人身事故を起こした富裕層のバカ息子が「当たり屋は死ね」と吠える冒頭から事故の原因が明らかになる中盤、理不尽な結末まで、すべてに絡むのが中国では普通とされる二面性だ。男児を出産した愛人が手厚く保護され、事件性がある事故でも高額な慰謝料で加害者も被害者もウィンウィンな実態は、はしたないという表現がぴったり。政治色が薄いとはいえ、よくも検閲を通ったものだとびっくり。ミステリーだが謎解明の着地点がとてもインモラルで、これが中国らしさかと納得してみた。
この短評にはネタバレを含んでいます