ターミネーター:新起動/ジェニシス (2015):映画短評
ターミネーター:新起動/ジェニシス (2015)ライター5人の平均評価: 2.8
あーあ、またやっちまった。
映画が始まってしばらくはかなりの敬意をもってこれまでの流れを踏襲、理知的に物語を展開させる意思が伺えるのだが…パラレル・ワールドを持ち出せばどうにでもなるというシリーズものの悪弊にどっぷり浸かった展開に墜ちてしまうのが辛い。もちろんシュワルツェネッガーの帰還は目にも嬉しいけれど、あからさまな老化は覆い難く、自虐ギャグも虚しく響く哀しさがあるしなぁ。T-1000(イ・ビョンホン!)のモーフィングを「2」製作当時の感触に近づけていたりするのは嬉しいが、T-3000が粒子に分解されてはやたら安易に蘇生しすぎるのはサスペンスもクソもなく興醒め。J.K.シモンズのオタク的キャラは使い道ありそうだが。
新境地からその先はシリーズのケモノ道、か?
このシリーズの厄介な点は、3&4作目がある意味、迷走であったこと。おかけでファンの嗜好は複雑化し、1&2作目原理主義者からシュワさえ出ていればOKという人まで、さまざまだ。
そんな中で、今回の新作はどう映るのか?もっとも意見が分かれるのはドラマのパラレルワールド化だろう。物語を予測不可能にしている点は買うが、一方でシリーズを“何でもアリ”にしている点が気になる。
タイムトラベルを本格化させた点が新味に写ったが、どれだけのファンが、この奇抜な新境地を楽しめるのか。本シリーズが王道ではなく、さらなるケモノ道を進み始ているような気がしないでもない。
掟破りの展開で、オリジナルのファンを裏切る?
あくまでも、『1』『2』あっての『ジェニシス』。一見、オリジナルをリスペクトしてるが、制作側の「ファンを裏切ってやる」という野望が見え見えで、そんな掟破りの展開を受け入れられるかで、評価は変わってくる。物語がより複雑となり、アラン・テイラー監督が『マイティ・ソー/ダークワールド』でも発揮させていたコミカル要素が目立つことも、クールさを突き通していたオリジナルとは異なる。ちなみに、監督の「ゲーム・オブ・スローンズ」繋がりで起用されたエミリア・クラークは、キュートさが残り、サラ・コナーとしては微妙。とはいえ、年齢を重ねたT-800と父娘のような関係性になった設定は面白いので、★おまけ。
中年シュワちゃんVS若きシュワちゃんのガチバトルは燃えます
サラ・コナーの抹殺を阻止するべく、1984年へとタイムスリップしたカイル。と、ここまでは1作目同様だが、しかしそこで彼を待ち受けていたのは、過去が書き換えられたことによる全く別の運命だった。
シリーズの原点に立ち戻りつつ、新たな世界観を再構築。T-800が時間経過とともに老けるという設定は苦笑だが、それでも1作目を忠実に再現した’84年の世界で展開する中年シュワちゃんVS若きシュワちゃんのガチバトルにテンションの上がるファンは少なくないだろう。
だが、問題は中盤のどんでん返しだ。ネタバレを避けるため詳細は省くが、ある意味でファン心理をも裏切る安易な手法。これだけはやめて欲しかった。
ジェームズ・キャメロン監督が共感したポイントはきっとココ
確かに、第1作の根幹は"よく出来たタイムトラベルSF"だった。本作はその原点に立ち戻り、何よりも"よく出来たタイムトラベルSF"であることを目指す。第1,2作の監督ジェームズ・キャメロンが「自分にとっては、これが第3作だ」と公言したのは、この姿勢に感じ入ったからだろう。そして本作の"名作に挑戦する勇気"にも。本作は、物語の起点をキャメロンの第1作と同じにして、そこからまったく別の物語を描く。T-800とカイル・リースが未来から1984年にタイムトラベルするが、その結果は同じにはならない。スカイネットの目的は、アップデートされている。この大胆さが、他のリブート作とは一線を画している。