パレードへようこそ (2014):映画短評
パレードへようこそ (2014)ライター3人の平均評価: 5
抵抗の歴史から秀作が生まれる
サッチャー時代の炭鉱夫の窮状は、映画で随分知ったつもりになっていたが、まだネタがあるとは。労働者と同性愛者が共闘して権力に物申す。その背景にある英国の同性愛者への偏見の根深さは『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』公開後だけに、実に感慨深い。そこに英国ジョークを散りばめながら再現された実話は、狭い世界で足を引っ張り合う我々に対して、向かう敵はそこじゃない!という叱咤と、明日への活力をくれる。これぞ英国映画のお家芸。
しかし中国なら文革、ドイツはナチ、スペインはフランコと、皮肉なことに庶民が抑圧されていた時代を描いた作品は秀作揃い。今の日本からもいずれ傑作が生まれるはず⁉︎
同性カップル証明書発行条例に反対する人こそ見てほしい!
マッチョ&超保守的な田舎の炭坑労働者組合とロンドンのおしゃれな同性愛者たちが連帯した奇跡が実話とは! 心がざわめき、そしてハッピーな気分になる快作だった。ハードコアな経済改革を押し進めたサッチャリズムの犠牲になっていた人々が「敵の敵は味方!」という感じで共闘し始めるあたりはちょっとおかしいが、監督は連帯する過程で同性愛者に対するさまざまな差別意識や好奇心を浮き上がらせ、人間には自身と異なる他者を受け入れる素地があると教えてくれる。さらに80年代後半に同性愛者の前に立ちはだかったAIDSの恐怖にも触れていて、私的な名作 『ロングタイム・コンパニオン』も彷彿。心地よく泣きました。
差別も偏見も蹴散らすオバちゃんパワーに脱帽!
実話を基にした作品。‘80年代のイギリスで、サッチャー政権の弱者切り捨てに苦しむ炭鉱労働者たちへ、同じように弾圧を受ける同性愛者たちが救いの手を差し伸べる。
とはいえ、田舎の労働者にとって同性愛者はエイリアンも同然。なので、虐げられる者同士の団結も、なかなか一筋縄ではいかない。そんな中、両者の溝を埋めていくのが実はオバちゃんパワーだ。
同性愛者を嫌う人々に“恩を仇で返すなどケシカラン!”と啖呵を切り、初体験のゲイバーに興味津々、大人のおもちゃを見つけてキャッキャと笑い転げるオバちゃんたちの大らかで可愛らしいこと!世界が日に日に荒んでいく今、必要なのはオバちゃんの力なのかもしれない。