おんなのこきらい (2014):映画短評
おんなのこきらい (2014)ライター2人の平均評価: 5
「可愛いだけじゃダメ」の向こうへ!
‘90年代「渋谷系」以降に意味づけられた“可愛い”という言葉に潜在する客観性や虚構性、あるいは邪悪さや居心地の悪さをおそらく初めて分析的に描いてみせた映画ではないか? 可愛くあることについてこれでもかとばかりに浴びせられる辛辣な言葉や行為に対して一歩も引かず自己肯定し、たとえそこに疑念が生じ、結果的にボロボロなまでに瓦解して、“可愛い”のはらわたを見せつけるが如き醜態をさらけ出してもなお「やっぱ可愛いじゃん」とおそらく多くの男性女性に納得させてしまう、問答無用に“可愛い”森川葵が戦慄もの。彼女以外の女優陣もそろって“可愛い”のもまた監督・加藤綾佳の邪悪さを感じさせるなあ。
驚異の新鋭監督による「女」という必修科目の教材か!?
「キリコちゃん、ワイン好き?」
「好き! あ、でも今日ちょっと用事入ってるんです。また誘って下さい」
男の誘いを完璧な作法で断るヒロイン=森川葵。まるで『ごめんね青春!』で彼女が演じた美女子あまりの猛毒ハードコア版。一見モテの最強ランクに居る彼女だが、実は高度に拗らせた闇を抱えており、それをいかに救済するか――が主題になる。そして監督の加藤綾佳(88年生)は入口まで導く模範解答の一例を用意したように思える。
元々はMOOSIC LAB 2014の受賞作だが、全てが明晰&分析的でメジャー度の高い才能。加えミュージカル風パート(ふぇのたす)にはF・オゾン『焼け石に水』の如きキッチュ感が匂った。