ピンクとグレー (2015):映画短評
ピンクとグレー (2015)ライター2人の平均評価: 4
『真夜中の五分前』と対で観るべし。
現役アイドルが書いた小説を同じ事務所の現役アイドルが演じる。このあらかじめ与えられた枠組みを利用して、アイドル映画のはらわたを描こうとする試みがまず面白い(そこには角川映画の記憶と澤井信一郎の代表作へのリスペクトもあるだろう)。それは光と影が明確に区分できるものでなく、そのあわいの空間が残酷に引き延ばされたような青春期独特の心象風景を、嘘偽りなく映像化しようとするサディスティックな試みでもある。宣伝が「62分後の衝撃」とふっかける“仕掛け”はそのコンセプトにおいて十全に機能していて、とりわけ菅田将暉のメフィストフェレス的魅力は圧倒的。それにしても柳楽優弥が語る“オチ”は物語映画への挑発だ。
またもや菅田将暉に目が釘付けです
人気絶頂の最中に突然自殺した若手スターと、その栄光の陰に隠れた親友の皮肉な運命を描く。芸能界の裏側を覗き見るというゴシップ的な要素を孕みつつ、物語は人間の多面性とアイデンティティの不確実性を模索する青春残酷物語となっている。
で、問題の中盤の衝撃的(?)な仕掛けだが、ああ、その手で来ましたかと一瞬頭を抱えたものの、確かにテーマを考えればメタフィクションの構造は当然の帰結だろう。もはや重量級の凄みすら漂わせる菅田将暉をはじめ、役者陣の演技もギミックに負けていない。とはいえ、全体的には不完全燃焼。着地点に迷った挙句に投げ出したような印象は否めない。