ラブ&ピース (2015):映画短評
ラブ&ピース (2015)ダメだからこそ愛おしい、バカ者のスローバラード
新作の相次ぐ園子温の作品の中でも、本作はその本流というべきダメ人間映画に近い。周囲が見えず、自分の願望の方向のみに突っ走る青年のドラマは常識どおりには収まらない。
社会から見捨てられるはずが、たまたま運よく気流に乗ってしまい、いい気になった主人公。その自我がモンスター(というか、怪獣)と化してゆく奇抜な展開は、理解できない人にはチンプンカンプンだが、ツボにハマッたらトコトン共感できる。
ヒロイン、麻生久美子の朴訥さやRCサクセションの「スローバラード」は、ダメな人間を原点と引き戻す吸引力がある。オルタナティブな怪作だが、そこに魅せられたとき、本作は特別なものになる。
この短評にはネタバレを含んでいます