ハーモニー (2015):映画短評
ハーモニー (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
やはり映像化のハードルは高かったか。
ヒロイン・トァンによるしつこいほどのモノローグなどを中心に構成されているため、しっかりエンタメ寄りのロードムービーだった『屍者の帝国』に比べると、テンポが悪い印象は否めない。それだけ原作に忠実ともいえるのだが、今回も女性受けを狙ったか、BL色を強めた『屍者の帝国』に続いて、百合色を強めているが、テーマがテーマだけに、ここも評価の分かれどころといえる。期待していた大災禍シーンなど、作画に関しても、もっと作り込んでもらいたかった感もあり、ラストの余韻も含め、原作の世界観を完全映像化したとは言えない結果に。とりあえず、諸事情からトリを飾ることになった『虐殺器官』に期待させてもらいます!
光溢れる、無菌で、静かな地獄
原作をそのまま映像化する、という試み。人間にとって意識とは何か、というピーター・ワッツのSF「ブラインドサイト」に通じるモチーフを、3人の少女たちの物語として描く。原作の白く滑らかで無機質な世界像は、光沢加工の白無地に小さな文字を配置した最初の文庫版の表紙デザインでも表現されていたが、アニメーションという形式を得て、さらに極まった。光が溢れ、透明で、冷たく、無菌で、静かな地獄。水の入ったグラスに血の一滴が出現するシーンなど、映像作品ならではの演出も随所に。原作の言葉を聞かせたい場面では、画面が人物ではなく世界を映し出す。そのようにして言葉を際立たせつつ、映像を静止させず、動かし続ける。