ベルファスト71 (2014):映画短評
ベルファスト71 (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
志ある若者ばかりが使い捨てにされる戦争の理不尽
紛争の嵐が吹き荒れる’71年のベルファストを舞台に、戦場と化した市街地にたった一人で残された若き英国兵士の地獄巡りを描く。
唯一の肉親である幼い弟を施設へ預け、命の危険はないと言われた治安維持の任務に就く主人公。だが、戦場に絶対の安全などありえず、予期せぬ事態は起きてしまう。
英国兵士というだけで住民に憎悪の目を向けられ、祖国を憂う活動家たちからは命を狙われ、味方であるはずの英国スパイも彼を工作活動のコマ扱い。主人公は弟思いの真面目な若者だが、戦場では彼の人間性など誰も気にかけたりしない。サバイバルアクションの形を借りて、志ある若者ばかりが使い捨てにされる戦争の理不尽を描いた異色作だ。
ここでは反射神経がよくても生き延びられない
戦争というものはどんなものでも汚い。この映画はそれを、その場で盗撮したかのような緊迫した映像で映し出す。戦いに英雄的なところは微塵もない。味方と敵は、属する陣営ではなく、その瞬間の状況によって変わり、それは変化し続ける。そこで生き延びることが出来るかどうかは、反射神経のよさがものをいうように見えて、実はそうはならない。映画の中盤で、部隊から取り残された新兵である主人公が遭遇する女学生が、登場したばかりのデヴィッド・ボウイのファンだという描写があって、これがあの時代に起きていたことなのだと、時代感覚に照準が合う。ここでは空がずっと曇っていて、映画の最後になっても晴れない。