チャンス商会~初恋を探して~ (2015):映画短評
チャンス商会~初恋を探して~ (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
中盤からの意外過ぎる展開に驚かされる感動ドラマ
人付き合いの苦手な独身の頑固ジイさんが、隣家に住む中村玉緒似の明るい老婦人との淡い恋愛や町内の人々との温かな交流を通して徐々に心を開いていく…のかと思いきや、中盤で明かされる驚きの真実によって思いがけない方向へと話が展開していく。
なるほど、脚本は非常によく練られている。土地開発問題を巡る町内の様々な思惑を巧みに絡めながら、善良さも愚かさも美しさも醜さもひっくるめた人間の素晴らしさや家族の絆を描いていく辺りは秀逸だ。
ただし、物語が終盤へと進むに従って甘ったるいお涙頂戴路線へと傾いていってしまうのが残念。唐突なハッピーエンドにも少なからず違和感を覚える。
現代のおとぎ話ともいえる老いらくの恋物語
タイトルから孤独な老人が死ぬ前に初恋の女性を探す話かと思っていたら、ええっ!? 老いらくの恋物語に孤独死や高齢による体調不良、都市開発をからませつつ現代のおとぎ話に仕上げたカン・ジェギュ監督の新境地だ。アクションが得意な監督だが、本作では登場人物の心のアクションを細やかに汲み取っている! ヒューマンなドラマであっても最後に大技を仕掛ける演出はやはり監督の持ち味だし、観客のツボを抑えているのがさすが。役者陣も素晴らしく、頑固じじいを絵に描いたような主役を演じたパク・クニョンと彼の好意に茶目っ気たっぷりに応えるヒロイン、ユン・ヨジョンのカップリングが微笑ましい。