天使が消えた街 (2014):映画短評
天使が消えた街 (2014)謎多き殺人事件に投影された芸術家の葛藤
日本でも当時話題になったイタリアの女子留学生殺人事件を題材に、その映画化に取り組むドキュメンタリー作家が複雑な事件の真相を追求していく。
とはいっても、本作の核心は推理や謎解きにあらず。事件をスキャンダラスに報道するメディアや、勝手な想像や憶測で感情的に騒ぎ立てる世論に疑問を呈しつつ、そんな無責任によって被告の運命が左右される皮肉を描く。
面白いのは、そうした不条理が映画の制作過程とシンクロしていく点。一過性の大衆心理や刹那的な商業主義に振り回される芸術家の葛藤が浮かび上がる。ただ、ドラマ構成が散漫なため、全体的に退屈で分かりづらい印象を残すことは否めない。
この短評にはネタバレを含んでいます