残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋- (2015):映画短評
残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋- (2015)ライター2人の平均評価: 4
ハイブリットな「ほんとにあった! 呪いのビデオ」
伊坂幸太郎原作の映画化でブレイク以前、「ほんとにあった! 呪いのビデオ」の初代監督だった中村義洋。独特な語り口のナレーションが現在も人気の監督が、約10年ぶりに挑んだ本格ホラーであり、ベースは得意とするミステリー仕立て。テロップの入れ方などはモキュメンタリータッチであり、『Mr.BOO!!』ばりに首コルセットが似合う「私」役の竹内結子によるモノローグは中村節に近い。つまり、予算を懸けて見事なまでに“ハイブリット版「ほん呪」”に仕上げてしまったのである。CG使い方など、やり過ぎともいえるラストに関しては賛否あるだろうが、次々と判明していく真実にまつわる小ネタなど、オカルト板好きにはたまらない。
日本の実話ホラーにしか描けない恐怖がある
穢れ。まず、この古来から日本人の無意識に深くしみ込んでいる概念を題材する。さらにこの概念を、数年で建物が立替えられ、アパートの前の居住者が誰かは不明という、日本の住宅事情に絡める。そのようにして描かれるので、本先で描かれる異様な出来事は、日本で暮らす者なら誰にとっても他人ごとではない。自分もいつ同じ状況に陥るか分からない、いや、すでに陥っているのかもしれないという不安にすら駆られる。そのすぐそこにある感じ、そのリアルさ。監督の中村義洋と脚本の鈴木謙一は、長く「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズの構成・演出・語りに関わってきたコンビ。日本の実話ホラーにしか描けない恐怖がここにある。