SLUM-POLIS (2015):映画短評
SLUM-POLIS (2015)ライター2人の平均評価: 4
二宮健という名を覚えておくべし!
大阪芸大の卒業制作、要は学生映画だが、そんな色眼鏡で見ると、昨今の自主映画のレベルの高さと同時に、来年あたり二宮健監督が、何食わぬ顔して大手でアクション大作を撮っている姿まで見えてくる。そんな日本映画界の希望で、脅威でもある本作だが、とにかくエンタメ志向の若手監督が陥りやすい地雷の数々を北村龍平や室賀厚にならず、何なくクリアしまった恐るべし編集&音楽センスに脱帽。それによる各シーンのインパクトに対し、ストーリーテラーとしての力量不足と自主特有の全部乗せ感により、後半にかけての流れのぎこちなさは否定できない。監督の方向性は違えど、同じ低予算ディストピアもの『ターボキッド』と観比べるのも一興だ。
このクールかつエモーショナルな青春映画を見逃すな!
冒頭の銃撃戦からソリッドな音楽と引きしまったアクション編集が見事に合致し心を騒がせるこの映画。もっともマイケル・マンやら岩井俊二やら70年代ニューシネマやら“好きなもの盛り込みました”感はあるし、主人公3人の構図だけでなく儚くて苦く甘い香りを残す青春映画であるという点でR.アンリコ『冒険者たち』の裔であるのは明白だが、大学の卒業制作として作られたとは思えない…というより、そう思わせてなるものかと高いエンタテインメント志向をドンと打ち出す、その気概や良し! しかし近未来ディストピアの外景に福島の被災地をそのまま借りた真っ正直な大胆さが、作品に圧倒的なリアリティを与えているのも確かだ。