徘徊 ママリン87歳の夏 (2015):映画短評
徘徊 ママリン87歳の夏 (2015)「覚悟」が日常世界を明るいトーンで照らす
TV番組でも認知症予防はよく取り上げられるが、「その先」に導くのが本作。事態に直面した時、人生をいかに楽しむか、面白がるかという主題。
長回しで捉えられる老いた母ママリンと、娘アッコちゃんの“大阪的日常”は、まるでしゃべくり漫才。自宅で「ここ刑務所とちゃうの?」「あんた誰?」と文字通りボケまくる母に対し、アッコちゃんがニュートラルな視座から高速で入れまくるツッコミ。彼女の「覚悟」から来る冷静さが、深刻さを爆笑に変換してしまう。
この“明るいトーン”こそが生命線だ。人は陽気に振る舞う事だけでも、世界の見え方が随分変わるのだと。『未来世紀ニシナリ』『ITECHO』の監督・田中幸夫の新たな成果。
この短評にはネタバレを含んでいます