DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~ (2015):映画短評
DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~ (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
四半世紀の「電気」史を描く、大根仁最新作
世間的に18年前リリースの「Shangri-La」のイメージが強すぎるなか、なぜ彼らは14年のフジロックでヘッドライナーを務められたのか? そんなことを疑問に感じた若い音楽ファンには打って付けの一本だ。いかにも、大根仁監督作ともいえる怒涛の編集と元メンバーらのインタビューで一気に魅せる、四半世紀に及ぶ「電気」史。実際その場にいたパワステや野音などのライヴ、ANN絡みの長島監督コスなど、「人生」時代から追い続ける者にとって懐かしい映像満載だが、TMNとコラボしたデビューシングルに触れないなど、正直モノ足りなさも。そんななか、今だから笑えるラルクとの関わりなど、音楽業界のエピソードが絶妙に面白い!
想像以上に興奮した
監督・大根仁の卓越の核は批評性だと思う。本作は稀代のアーティストの肖像と連動した歴史を同時に切り取った。是もまた叙事詩だ。
二部構成的なのが肝。「人生」から「電気」になった89.8.20~まりん脱退の99.4.2という最初の10年は、90年代にテクノやレイヴを通して世界の音楽が繋がった流れをダイナミックに見せる。仏のエレクトロシーンを描いた『EDEN』と併せたら、より明瞭になるはず。
ゼロ年代以降は“Scrap & build”(ナレーションは英語)を繰り返す電気が自由に怪物化していく過程。役者・ピエール瀧からの逆算的な観方も可能。そして「何者なのか?」との問いや謎はさらに拡大する。傑作。