最愛の子 (2014):映画短評
最愛の子 (2014)ライター2人の平均評価: 4
一人っ子政策と経済格差が生んだ児童誘拐の悲劇
中国の大きな社会問題の一つである児童誘拐を題材に、連れ去られた我が子を探し求める両親の凄まじい執念、そうとは知らず我が子のように育てた誘拐犯の妻の深い悲しみを描く。実際に起きた事件の映画化だそうだ。
炙り出されるのは一人っ子政策の落とし穴、そして急激な経済成長による中国社会の歪みだ。安心して子供を外で遊ばせることもできない殺伐とした世相、拡大するばかりの都市と農村部の生活格差。具体的な事情や状況は大きく異なれど、しかし日本人にも他人事とは思えない部分は少なからずあるだろう。なんとも残酷で皮肉な物語だが、同時に子を想う親の愛情は万国共通だと改めて痛感させる。血の繋がりの有無に関係なく。
さらにヘビイな“中国版『そして父になる』”
中国で問題の幼児誘拐と人身売買をテーマに、前半パートは誘拐された子を探す被害者となる父親を主人公に、後半パートではその子を誘拐した加害者となる女性を主人公に展開。生みの親と育ての親との関係性は、『そして父になる』でも描かれたが、実話である本作は救いがなく、ピーター・チャン監督の演出はエンドロールまで観客の涙を搾り取ろうとするほど、しつこい。要はメロドラマの王道で、日本人好みだが、加害者役のヴィッキー・チャオがとんでもない演技を魅せる。夫は不動産業を営む大富豪、卒業制作の映画は記録的大ヒット。おまけに株式投資で大儲けと、幸せオーラ全開で、こんな不幸な女を演れるなんて、どうかしてるとしか思えない。