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ディーパンの闘い (2015):映画短評

ディーパンの闘い (2015)

2016年2月12日公開 115分

ディーパンの闘い
(C) 2015 - WHY NOT PRODUCTIONS - PAGE 114 - FRANCE 2 CINEMA - PHOTO: PAUL ARNAUD

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

移民問題に揺れる欧州の今を生々しく切り取った作品

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 赤の他人と偽の家族を装い、内戦の続く祖国スリランカを逃れた男性ディーパンが、移住先のフランスで移民の直面する様々な問題にぶち当たる。
 住居として提供された郊外の団地は、移民の若者によるギャング団がのさばり、白昼堂々と銃撃戦が繰り広げられる無法地帯。再会した同胞からも武器密売を持ちかけられる。暴力から逃れた先で暴力に苦悩する皮肉。綺麗事では済まされない移民問題の醜い現実だ。
 移民政策の失敗が深刻な社会問題と化した欧州の今を背景に、やがて“家族”を守る父親としての責任に目覚めるディーパンを通して、他者との共存という難題を掘り下げていく。容易に答えの出ないテーマだけに深く考えさせられる作品だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

現実と映画が高度にリンクするオディアールの世界

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

パリ郊外(バンリュー)の荒んだ光景を映画で初めて観たのは『憎しみ』だったか。本作も移民社会を描いた“新しいフランス映画”の系譜だ。奇しくも昨年11月のパリ同時多発テロ事件以降、ここで提示される現実の混沌はさらに関心を持たれる事と思う。

それをフィクションならではの娯楽作へと昇華するのがJ・オディアール流。彼は複合的な主題を巧く編み合わせ、既成のジャンルやカテゴリーを突破する独自性の高い作劇を見せる。唯一無二のシネアストだ。

主人公を演じるのは実際スリランカ内戦を兵士として体験した亡命作家。素人俳優を『狼よさらば』的なヴィジランテ・ムービーの父親像へと仕立てる技に震えるほど感動した!

この短評にはネタバレを含んでいます
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