シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (2016):映画短評
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (2016)ライター5人の平均評価: 4
正義より情に動かされるヒーローたち。
またしても“仲良くケンカしな”かと思うとさにあらず。シールドを内部崩壊させてみせた『ウィンター・ソルジャー』を引き継ぐ苦い仕上がりだ。ヒーローたちが正義と引き換えにもたらす災厄と、その善悪に関する論議は先のDC大作と酷似しているが、これを大国の一方的な倫理観による平和維持戦争のメタファーだと思わせる懐の深さがある。悪役がダニエル・ブリュールというベビーフェイスなのも似つかわしい (彼の監視官でマーティン・フリーマンが顔を見せるがどう関わってくんだろう)。とはいえ、売り物のバトルだけは打って変わってマンガ的、スパイダーマンとアントマンを三枚目として使ったテクニカルな演出で飽きさせない。
『チャーリー』好きにはたまらんカットも!
さすがは前作と同じ、ルッソ兄弟作。ロキ様繋がりながら世界観だけでなくキャラも変わった『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』に比べ、冒頭から恐ろしいまでに『ウィンター・ソルジャー』の世界観を踏襲。それにより、『アベンジャーズ』2作のお祭りムードは薄れたものの、スコット・ラング(アントマン)、ピーター・パーカー(スパイダーマン)の登場シーンは否応なしでも高まる作り。しかも、私生活でも噂だったマリサ・トメイとロバート・ダウニー・Jrが絡む『チャーリー』好き感涙のカットも用意!こちらにも母親のエピソードが出てきたときには驚いたが、観比べることで『バットマン vs スーパーマン』の粗さがより際立つ。
正義の戦いが招く災害を直視し、笑いの配合も絶妙なヒーロー内戦
世界情勢を巧妙に反映させた作劇に唸った。正義の戦いが招く、罪無き人々を巻き込む災害。憎しみの情念が引き起こす、果てしなき復讐の連鎖。鍵を握る過去を1991年に設定したのは、冷戦終了と湾岸戦争勃発という現在のルーツを意識したに違いない。
ヒーローによる災害や内部抗争といえば、すでに平成ガメラや平成ライダーが挑んできたテーマだが、マーベルはシリアスになりすぎることなく壮絶なアクションにユーモアを織り込む余裕さえみせる。今回笑いを担うのは、アベンジャーズの一員ではないスパイダーマンとアントマンの、意外性ある活躍。ザック・スナイダーによるDCの重厚沈鬱路線は、かなり水をあけられてしまった感がある。
アベンジャーズとは似て非なる、ヘビーな力作
ヒーロー総登場ゆえの“『アベンジャーズ2.5』”的な下馬評も、製作総指揮のネイト・ムーアによる“あくまで『キャプテン・アメリカ』シリーズの新作”というアピールも納得できる。
チーム・キャップとチーム・アイアンマンの激突はアクションの見せ場だが、そこに必然性があるのは、もちろんドラマがしっかりしているから。両者の葛藤が最後の最後までドラマ内に貫かれ、『アベンジャーズ』的なお祭ムードとは異なる、ヘビーな感触を残す。
ヒーロー活動による人的・物的被害という、『バットマン vs スーパーマン』ではおざなりにされていたテーマも最後まで脈づき、古典悲劇のような重みをも感じさせる力作。見応えアリ!
「アベンジャーズ」で「キャプテン・アメリカ」で超モリモリ!
大盛り!「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」の世界観・色調・質感・アクション演出を用いて描く「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の続きでもある。監督ルッソ兄弟は「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーPart1」「Part2」の監督にも決定済みで、本作は次の壮大な物語へと連なっていく作品でもあるのだ。同時に「キャプテン・アメリカ」シリーズの続編でもあり、前作のドラマの続きを描きつつ、キャプテン・アメリカとはどういう存在なのかをも描いていく。そしてこの2シリーズを無理なく両立させたうえで、多数のキャラたちの見せ場と名セリフも、複数の新キャラ紹介も、きっちり盛り込まれている。